トルコに向かう飛行機で出会った彼
トルコに向かう飛行機の中で、私は不安に押しつぶされそうになっていました。
偶然テレビで見た映像がきっかけで、カッパドキアで気球に乗って朝日を見たいと思い立ち、勢いだけでトルコ旅行ツアーにネット申し込みをした私。
年齢は70を超えています。世間一般では高齢者と呼ばれる年齢です。いざ飛行機に乗ってみると、周りに同年代の乗客は見当たりません。海外旅行なんてものすごく久し振りでしたし、年齢ならではの体力面の不安もありました。飛行機の離陸準備が進むにつれ、胸がドキドキし、なんとなく息苦しさも感じていました。
「私のような70過ぎの女が、お一人様でトルコに行くなんて、止めておいた方がよかったのかも・・・」
とにかくその時は、深く深呼吸をして自分を落ち着かせることに必死でした。
そんな私の異変に気付いたのでしょう。隣に座っていた50歳くらいの男性が声をかけてきました。
「大丈夫ですか?」、「具合悪いですか?」
「あっ、すみません。ちょっと久しぶりの海外旅行に緊張して、胸がドキドキしてしまって・・・」
するとその男性は、そっと私の手を握ってくれたのです。
「大丈夫ですよ。あなたが落ち着くまで、こうしていましょう」
男性の突然の行動に驚きはしましたが、不思議と嫌な感じはせず、彼の手のぬくもりを感じ取ると、心がスーッと穏やかになり、呼吸も楽になりました。
でも心の中は、今度は違う意味でざわつき始めました。
「どうして、こんなおばあさんと手を繋ぐのかしら?」
「下心から手を握ってきたのではなく、これは親切心からの行動よね?」
「母親をケアするような優しい気持ちで、私に接してくれているのよね?」
「でも、もしかしたら、私を女として見ているということも・・・」
知らない中年男性に手を繋がれたまま、心の中で様々な自問自答をしているうちに、いつの間にか飛行機はトルコへ向けて飛び立っていました。
同じツアー客だった彼
「同じツアー客同士みたいですね。よろしくお願いいたします」
しばらくの沈黙を破り、彼はにっこり笑ってそう言いました。
私のショルダーバッグにつけていた旅行会社のストラップと、座席のシートポケットに挟んだ旅の予定表を見て、そのことに気付いたようでした。
2人で話し始めると、偶然にも、彼は私と同じテレビ番組を見てトルコに行くことを決めたことが分かりました。さらに、ツアーにお一人様で参加しているのも同じでしたし、お互いにバツイチ同士で、別れた相手とはお見合い結婚だったのも同じだというのだから驚きました。
私達にはびっくりするほど沢山の共通点があったのです。
彼は私のタイプだった
彼は飲食店をいくつか経営しているそうですが、お店はほとんど別の人に任せているので割と自由が利き、この旅行に参加できたということも知りました。
彼はよく見ると結構ハンサムで、私のタイプでしたから、私はすっかり舞い上がってしまい、おしゃべりがとても楽しかったのを覚えています。
初対面の人と、しかもずっと年下の男性と、こんなに楽しく会話ができるなんて、本当に不思議でした。しかも、会話中ずっと手を繋いでいたというのも、今考えればおかしな話ですよね。
お互いに手を離すタイミングが分からなかった、というのもあったでしょうが、なんとなくこのまま繋いでいたい、とも思っていました。
ツアー中、ずっと一緒だった私達
同じツアー客として、私達はずっと一緒でした。
観光中も自然と2人で並んで歩き、他愛のないおしゃべりをしながらモスクや宮殿を見て回りました。イスタンブールのエキゾチックな雰囲気に心が踊り、私は既に彼と恋人気分になっていました。バザールでは2人でお揃いのモザイクテーブルランプまで買ってしまい、すっかり浮かれ気分。
でも、「私達、まるで恋人同士みたいですね」とは、流石に言えませんでした。
だって、私と彼は年が20も離れていましたから。
旅の目的地、カッパドキアに向かう
旅の後半、いよいよカッパドキアに団体バスツアーで向かうことになりました。
まるで夢の中にいるかのようなフワフワした感覚で、バスの中では一睡もできなかったのを覚えています。
「夢にまで見たカッパドキアがもうすぐそこに迫っている。しかもこんな素敵な男性と一緒に行けるなんて、私はなんて幸せなんだろう」
この時は、その夜にもっと奇跡のような出来事が訪れるなんて、想像すらしていませんでした。
カッパドキアの洞窟ホテルでキスをする
カッパドキアに到着後、私達は別々のホテルに宿泊することになっていたので、それぞれのホテルに別れ、後は一人で眠るだけという状態でした。
季節はもうすぐ冬になろうとしていて、カッパドキアの夜の冷え込みはとても強く、布団をかけても寒くて震えが止まりませんでした。
上着を着ながら寝るしかないかな、などと思考を巡らせていたとき、突然、ドアをノックする音がしました。ドアを開けると、コーヒーカップを握りしめた彼が立っていたのです。
「もしよかったら、一緒に夜のお茶でもしませんか?」
彼は、凍えるような寒さの中、コーヒーカップだけを手に持ち、わざわざ私に会いに来てくれました。そんな彼の姿を見て、思いました。
「この人のこと、本気で好きになってしまう・・・」と。
彼も同じように思ってくれていたようです。
2人で夜のお茶をしているうちに、どちらからともなく、私達は唇を重ねていました。
そして、同じ布団にくるまり、手を繋いて眠りにつきました。
「こういうの。何年振り?いや、何十年振りだろう・・・」などと思いを巡らせながら。
カッパドキアで気球に乗って朝日を眺める
次の日の朝早く、私達は一緒に気球に乗り込みました。空気はキリリと冷たく、体は寒さで震えていましたが、彼が私の手を握ってくれていたので、心はとても温かったです。
地球とは思えない、まるでどこかの惑星に来てしまったかのような、そんな不思議なキノコ岩が続く光景の中で、私達は輝く朝日を空から眺めました。
「長く生きていれば、こんな素晴らしい奇跡のようなことが起こるのね」
自然に涙が溢れました。彼も心なしか泣いているように見えました。
私からプロポーズ
旅から帰った私は、直ぐに彼にプロポーズしました。
大胆な行動であることは分かっていましたが、たとえこの恋が失恋に終わったとしても、自分の気持ちだけはどうしても伝えたいと思い、勇気を振り絞りました。
「私の残りの人生を、あなたと一緒に過ごしたいと思っています。私と結婚してくれませんか?」
その言葉を聞いた彼は、初めて会った時と同じように、優しく私の手を握ってくれました。
そして、私達は晴れて再婚することとなり、年の差20歳の夫婦になりました。
70代の女と50代の男
私達は、70代の女と50代の男です。
年の差は20歳ですから、他人から見たら親子に勘違いされてもおかしくはないでしょう。
こんなに年上の私ですが、彼は私のことが最初からタイプだったと言います。
彼は早くに母親と死別しているため、心のどこかに母親のような女性を求めていたようです。
そして私もまた、彼のように優しく心に寄り添ってくれる男性を、ずっと求めて生きてきたのだと思います。私達の出会いは必然であり、運命だった、そう信じています。
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