若い頃の恋愛というのは「相手がかっこいいか」「刺激的なデートが出来るか」「年収がどうか」なんて気にしていました。実際に、ルックスが良くて年収が高い男性と付き合うと、自分の価値も上がったような気になっていたものです。
だからなのか、私は60代になっても独身、一度も結婚をしませんでした。「一緒に落ち着ける人がいいな」と口を揃えて言う友人たちを理解したのは、とても最近のことなのです。
価値観優先の恋愛がこんなにも居心地が良く、自分の価値よりもお相手のことを考えることがこんなにも幸せなのか、彼に教えてもらいました。
10年ぶりの恋愛はアラ還
若い頃は恋愛中毒じゃないのかというくらいに恋をしていました。彼氏がいない時期はなく、仕事が終ればデートばかり。その時の理想は、当時の3高と呼ばれるものでした。
高身長で高収入で高学歴。彼氏の価値がそのまま自分の価値になる感覚で、みんなから羨まれる恋愛をしている時は満たされたような気持ちでした。
20代半ばになると、結婚する友人が増えていきます。恋愛をしていた相手は私と同じ見栄えが良い男性だったのに、結婚相手に選ぶのはパッとしない方で首を傾げたこともあります。
「もっとかっこいい男がいるのに」と内心思ったものです。
私は40代になるまでは積極的に恋愛をしてきました。刺激的で見た目重視な恋愛ばかりをしていたので、付き合いが深くなると「話が合わない」「優しくされない」「理解してくれない」と思ってすぐに破局してしまいます。
その頃から仕事が楽しくなり、恋愛からは離れていました。私が再び恋愛をしたのはアラ還と呼ばれる年齢になってから。しかも、背は低く、年相応で疲れも見えるような同年代の男性とです。
私のことを知っている友人はみな驚きました。
お仕事は大学を卒業してから一つの場所でずっと続けられている真面目な方で、お休みの日に友人を集めてパーティーをするような方でもありません。
離婚経験のある男性、なのに私の10年ぶりの恋心を奪っていったのです。「傍に居たい」と私が男性に感じたのは生まれて初めてです。
セックスは激しさよりも温かさ
お仕事を通じて彼に会いました。最初の挨拶から物腰が柔らかく、年齢は変わらないのですが「お父さん」を彷彿とするイメージでした。
実際に、離婚をされた奥様が彼の高校生のお子さんを育てられています。第一印象は男らしさよりも人間らしさだったのかもしれません。
仕事で何度か会ってお話をする内に、話してして疲れないし、裏表がなくて疑うことをせずに一緒にいられ、安心することに気づきました。
「今晩、何もなければお食事にいきませんか？」と声をかけたのはなんと私です。この年になって男性を誘うなんて自分自身が一番驚きます。
「帰ってもコンビニ弁当を食べるだけなのでぜひご一緒に」と紳士的に受けていただきました。彼と一緒にいるとゆったりとした時間が過ぎます。
何よりも驚いたのは、昔見た映画の感想が彼と同じだったり、今世の中で起こっている出来事に同じような感情を抱いていたり、価値観がとてつもなく合います。
結婚…
私はずっと独身で、結婚を本気で意識したことはありませんでした。でも彼に対しては「結婚したいかも」と思ったのです。それから二人で食事に出かけるなど時間を作りました。
そして、お酒を二人で嗜む関係にもなり、大人の関係に発展します。何人もの男性とベッドを共にしてきた私ですが、今まで以上にドキドキしていました。
「嫌われたくない」「綺麗だって思われたい」と強く願ったのもはじめて。決して激しいセックスではありませんでした。暖かくなるような、私を壊れ物のように扱う彼の手が優しく、癒されるようなものだったのです。
「今日のセックスは一生忘れない」と決めたのは言うまでもありません。彼は決して若くて格好良くて、誰からも憧れるような人ではありませんが、私にとっては温かい人で「手放したくない」人です。
今の幸福が何よりも大切
過去を振り返ると、自慢したくなることがたくさんあります。ファンクラブが作られているような男性と交際したこともありますし、結婚はしなかったけれど高収入の男性にプロポーズされたこともあります。
しかし、自慢したくなる過去があっても、今が誰からも愛されていなかったらどうなのでしょうか。60代になって今はまだ仕事もあり、友人もいて楽しく過ごしていますが、孤独を感じないとも限りません。
彼は結婚経験があるので、私と再婚してくれるかどうかは分かりませんが、それはあまり関係なさそうです。そばにいてくれる人、残りの人生を笑って過ごせる人がいるだけで、私は満たされるのではないでしょうか。
彼は皆さんの予想通り、口数の少ない人なのですが、私と一緒に過ごしてくれているということが答えだと思っています。60代の恋は、刺激よりも価値観が大事って心から感じます。
彼にこの年齢で会えて良かったです。
